腫瘍外科について

当院は、ガンの手術を多く執刀しています。他院からの紹介や、他で切除不可能と診断された腫瘍でも手術を行っています。ガンの悪性度と進行度によって、治療方針を決めていきます。初期ガンと判断した場合は完全切除で完治を目指す治療を行います。進行がんまたは末期ガンと診断した場合は、生活の質の維持を目的とした緩和療法をお勧めしています。

ペットが癌と診断されたご家族には、心の迷いと葛藤が起こります。ガンと病期の情報を共有して、まずは、無治療を選択した場合の、これから進行していく体の変化をお話しします。初期ガンで完治目的の治療を行う場合は、全力で治療に当たらせていただきます。進行癌で緩和療法を選択した場合でも、ご家族に協力して、獣医師と看護師が最後まで治療に当たらせていただきます。

完治目的

初回の手術で、ガンを完全切除を行えるように拡大切除を行います。ガンの悪性度や浸潤の程度により切除範囲を決定します。体に欠損が出る場合は、事前に写真をお見せして、受け入れ可能かを判断していただきます。

緩和目的

手術は、完治目的と緩和目的の手術に分類します。早期発見できた腫瘍や、転移がない場合は完治を目的として手術を行います。すでに転移が確認できたときに行う手術は、痛みや出血を抑えるための生活の質を改善することを目的とします。

 検査

皮膚腫瘍では一番初めに細胞診を行います。腫瘍に針を刺して、針穴に入った少数の細胞を染色して顕微鏡で観察します。麻酔が不要で病院内で診断が可能です。細胞診は、容易で体に負担が少ない検査です。体の中にある腫瘍は、血液検査、超音波検査、レントゲン検査をおこなうことで発見できます。

細胞診で良性腫瘍と判断した場合、経過観察とするか手術を行うか決めます。

良性腫瘍でも手術する場合

1)自壊、感染
2)飼い主の希望、肛門近くの乳頭腫など
3)悪性転化の可能性、白猫で潰瘍がある耳翼紫外線アレルギー、大きな皮内角化上皮腫など
4)機能障害、大きな脂肪腫、膣の平滑筋種、歯肉腫など
5)他の理由で全身麻酔するときの同時手術

悪性腫瘍または細胞診では判断がつかない場合は、問診、近くのリンパ節、血液検査、画像検査を行い、全身状態を把握してから治療方法を考えます。

腫瘍が悪性と分かった時の治療法の選択

腫瘍の種類で、相性の良い治療法があります。主な治療法の選択は、局所の腫瘍なら手術による摘出、リンパ腫などの全身性のガンなら抗がん剤、脳や鼻腔内の腫瘍なら放射線、手術や抗がん剤が出来ない場合は活性化リンパ球療法、末期がんなら緩和療法です。
手術を行う場合は、獣医師と病気の情報を共有することが重要です。

  1. がんの種類と進行度
  2. 手術目的とリスク
  3. 手術しないときの転機
  4. 手術後の機能障害
  5. 他の治療の選択肢
  6. 2次診療施設について
  7. 費用、入院期間

手術の目的を理解しましょう

初期のガンなら根治を目指す手術を行い、末期のガンで手術をする場合は、化膿や痛みを改善させるための手術を行います。

  1. 根治手術:腫瘍をすべて切除して完全に治す目的の手術です。
  2. 緩和手術:完治をさせることが出来ないガンの手術。猫の乳腺癌で自壊や化膿の改善や、犬の骨肉腫で足の痛みをとる目的の手術で生活の質を上げます
  3. 緊急手術:事故や出血などで緊急的処置が必要な場合は、検査をするより先に手術を行い、状態を安定させることがあります。例)腹腔内出血、心タンポナーデ、消化管穿孔、尿道閉塞などの時間的余裕がない場合
  4. 診断と手術を同時進行: 検査結果で手術法が変わらないか検査リスクが高い場合は、手術を行って切除した腫瘍で組織診断をおこないます。

 

手術

全身麻酔が必要です。
悪性腫瘍はできる限り広範囲で切除します。
執刀する獣医師の技術により、手術後の結果に差が出ることがあります。

口腔内腫瘍

悪性メラノーマ、線維肉腫、扁平上皮癌など、大きな口腔内腫瘍でも対応できます。

皮膚腫瘍

小さな腫瘍なら局所麻酔の切除も可能です。大きな腫瘍でも、皮膚移植が可能です。

腹腔内腫瘍

肝臓腫瘍、腎臓腫瘍、腸管腫瘍、膀胱腫瘍に対応できます。

 

病理検査

摘出した腫瘍は病理検査を行います。病理診断で、良性・悪性の判断、腫瘍の進行度、腫瘍の悪性度、周りの組織への浸潤の程度がわかります。
良性腫瘍で完全切除ができていれば治療は終了です。
悪性腫瘍だった場合は、転移の兆候が見られたり、不完全切除だった場合は、今後の治療方針(抗がん剤、拡大手術、放射線療法など)を決めます。

 手術後:病理結果が悪性だったら

「完全切除」と「不完全切除」で、これからの経過と治療が大きく変わります。ガンが完全切除できて転移しにくいタイプなら、がん治療は終了で、後は定期検診で済むことが多いです。
病理診断書に「不完全切除」「脈管内浸潤」「リンパ節転移」などが書かれている場合は、追加の治療が必要になることがあります。転移しやすいガンは抗がん剤を行い、局所再発をしやすいガンは拡大切除や放射線治療をすすめます。
ガンの悪性度が高い場合や、手術で不完全切除だった場合、獣医師は下記の項目に沿った説明をします。

  1. 再手術で拡大切除の必要性
  2. 放置の危険性
  3. 手術後の補助療法
  4. 再発転移の可能性
  5. 定期検診の頻度

手術、抗がん剤、放射線以外の治療法

活性化リンパ球療法

動物には病気や怪我に対して自分で治そうとする免疫が備わっており、体に侵入してきた細菌やウイルスやガン細胞を攻撃して死滅させる能力があります。活性化リンパ球療法は、血液に含まれるTリンパ球を体外で培養して増殖させた自己のリンパ球でガン細胞を攻撃させる治療法です。
通常の抗がん治療と併用したり、標準的な抗がん治療が選択できない場合におこないます。生活の質を維持しながら、延命効果が期待できます。

過去に活性化リンパ球療法が治療対象になったガン

犬:メラノーマ、乳腺腫瘍、扁平上皮癌、肥満細胞腫、血管肉腫、骨肉腫、移行上皮癌など
猫:乳腺癌、リンパ腫、扁平上皮癌、メラノーマ、腺癌など

適応不可な症例

・猫エイズ、白血病陽性の場合
・T細胞性リンパ腫

メリット

小さなガンや全身に広がったガンに対する治癒効果、手術後のガンの再発を防止することが期待できます。
自己の細胞を使う為、副作用のリスクが小さい治療法です。
抗がん剤や放射線療法との併用が可能です。

デメリット

進行ガン、末期ガン、大きくなった腫瘍には効果が期待できません。
投与回数にもよりますが費用が高額になります。

治療方法

血液からTリンパ球を含む層を回収して、薬剤を加えてTリンパ球の活性化と増殖を行います。約1000倍に増殖したTリンパ球を洗浄と回収して、点滴で体内に戻します。

投与間隔の標準的な治療は、2週間毎の投与を4〜6回行い、治療効果の判定をします。その後は経過を見ながら治療を継続するかを検討します。


早期発見と治療が重要です。

腫瘍が大きくなってからの治療は、ペットの体の負担が大きく、治療しても完治が望めなくなる場合があります。また、治療費も高額になります。
悪性腫瘍でも早期に治療ができれば完治できる可能性があります。腫瘍の早期発見のために毎年の健康診断を推奨しています。