★3Dギプス治療法

はじめに

前足を骨折しやすい犬は?

前足骨折した181頭

体重が5kg以下で2才以下の小型犬が前足を骨折しやすいです。特に若く活発なトイプードル、ポメラニアン、イタグレに多いです。骨折の治療は、手術、従来のギプス固定、3Dギプス治療があります。

3Dギプス治療法とは

歩行の負荷で骨折を治します

当院は、2018年に犬の橈尺骨骨折を治す新しい治療法として、足に立体的に完全にフィットする筒状のギプスで治す3Dギプス治療法を確立しました。完全固定タイプと3Dの2種類のギプスを使用します。3Dギプス装着後は運動制限はありません。体重1〜2kgの超小型犬、高齢犬、足の細長い犬種でも治療できます。歩行の刺激で骨折を治す画期的な治療法です。

3Dギプスは「従来の治療の問題点」を克服しました

  1. 治療期間中でも歩行や駆け足、ジャンプができる
  2. 手術は不要
  3. 骨折の治りが早い
  4. 骨折は太く丈夫に治癒する
  5. 骨折が治る日数が予測できる
  6. 週1回の通院

よくある質問、Q&A


治療手順

骨折したら当院に電話かメールで連絡して早い日に来院して下さい。骨折直後は炎症止めの薬は使用しないでください。3Dギプス治療法は2種類のギプスを使います。骨折初期は完全固定のギプスで7日目くらいに3Dギプスです。3Dギプスを装着して歩行することで骨折は治ります。

来院後の治療

骨折すると足先は上に持ち上がります。その後、骨折端がズレて重なり合い変形が大きくなっていきます。できるだけ早期に骨折した足は添木を使って固定します。骨折した足は完全固定を行い、約7〜10日間は安静に過ごします。

骨折した足の石膏模型を作成してから3Dギプスを作製します。3Dギプスを装着してからは歩行を開始します。装着初期は3本足で歩行しますが、1週間程度で骨折した足でも着地するようになります。皮膚と3Dギプスは密着しているため、週1回の通院で皮膚の洗浄と消毒を行います

週1回の通院で、3Dギプスを調整しながら皮膚の洗浄と消毒をします。

2週間ごとにレントゲン撮影して骨の再生を確認します。通院日数は年齢、炎症止めの使用の有無、骨の折れ方により異なります。骨折した箇所で架橋結合ができたら治療が終了になります。自己の修復力を利用して治る骨は短期間で太く強く治ります。3Dギプスの治療期間の運動制限はありません。

骨折の治り方

3Dギプス治療は折れた骨を太く丈夫に治します

骨折直後に骨の中心にある骨髄幹細胞が漏出します。骨髄が固まる7日間は骨折した足をまっすぐに固定して安静に過ごします。

7日を過ぎると骨折は修復期に移行します。3Dギプスを装着して歩行を開始し骨折部位に軸圧負荷をかけます。骨髄幹細胞が骨芽細胞に変化していきます。シャープだった骨折ラインにモヤがかかるようになります。これが柔らかい骨が作られて修復が始まります。

歩行による負荷を継続することで、柔らかかった軟性仮骨が硬い硬性仮骨に変化していきます。この時期になると犬はほぼ正常な歩き方をします。

骨折ラインが消えたら治療は終了になります。この時点で骨折箇所は太くなっています。以降の改変期になり太くなりすぎた骨は元の太さと構造に戻ります。

3Dギプス治療例


リアルタイム治療

X(ツイッター)にて治療中の犬を載せています。


骨折が治る日数

骨折が治る日数は予測できます

当院で治療した181頭の治癒日数を調べました。生後6ヶ月未満の犬は約1ヶ月で骨折が治癒します。2才以上では約2ヶ月半で治癒します。

考察

小型犬の前足骨折は手術や従来のギプスでは治療が難しいとされています。犬が小さいほど手術のリスクが高まり「骨折が治らない」ことも少なくありません。当院が確立した3D ギプス治療法によって前足骨折の治療は手術と運動制限が不要になりました。自己修復力を使って治すと、治癒までの日数が短く骨折は太く丈夫に治癒します。当院の調査により年齢別の骨折の治癒日数もわかるようになりました。3Dギプス治療法は一般の動物病院へ広く普及できます。「小型犬の前足骨折は治療が難しい」とされる獣医療の常識は克服できます。


学会発表

  • 3Dギプスによる犬の橈尺骨骨折の治療 石嶋茂夫(2023年度第107回 獣医麻酔外科学会)
  • 犬の橈尺骨骨折のピンニング手術後の骨吸収が3DギプスとPRP療法で回復した症例 石嶋茂夫(日本獣医再生医療学会 第15回年次大会)
  • 3Dギプスを用いた橈尺骨骨折の非観血的治療 唐津健輔 石嶋茂夫(日本獣医内科学アカデミー学術)
  • 3Dギプスによる犬の前足骨折の治療 石嶋茂夫(第21回 日本臨床獣医学フォーラム年次大会)

3Dギプス治療ができる動物病院

当院までの距離が遠い場合は、下記の動物病院の獣医師に依頼して下さい。

>いしじま動物病院3Dギプス骨折治療センター

いしじま動物病院3Dギプス骨折治療センター

院長、獣医師 石嶋茂夫
千葉県柏市豊四季130-22

保管業
登録番号,第12ー2ー26号、登録,平成24年12月12日、有効期限,令和9年12月11日、 動物取扱責任者,石嶋茂夫