手術法
骨折した場合の多くは、動物病院で手術による治療が行われます。手術法はプレート手術、ピンニング手術、創外固定手術があり、骨折のズレを真っ直ぐにして金属で固定して、数ヶ月間は運動を制限して安静に過ごさせます。骨が癒合したのを確認したのちに、再度、金属を取り出す手術を行います。



手術のリスク
薄いプレートと細いスクリューだと曲がる、太い頑丈なプレートとスクリューだと骨吸収が起こるジレンマ
当たり前に行われている前足骨折の手術ですが、当院には手術後の癒合不全の相談が多く寄せられています。
骨の癒合不全

しかし、骨折の手術後に数ヶ月すると骨が徐々に細くなって消えていくことがあります。骨が完全に消失した場合は骨の再生は不可能になります。


手術後の再骨折

手術が終わってまもない時期に同じ場所を再骨折することもあります。
最初の手術で骨折が治らなかった場合は骨の内部構造が変わるので、骨折は治りにくくなります。
従来のギプス固定法

一方、従来のギプスは、骨折した足を添え木で固定します。完全に固定して運動制限をおこない自然に治癒するのを待ちます。骨にヒビが入った亀裂骨折なら治療ができますが、完全に折れた骨折は治せません。
骨湾曲と骨密度の低下

従来のギプス固定を数ヶ月間にわたり装着すると、骨密度が低下して骨が湾曲していきます。また、重度な場合は骨が消えてしまいます。 こうなると正常な歩行は不可能になります。
「骨が細いから」「手術後に安静にできなかったから」が理由への疑問

小型犬の骨折が治りにくい理由として、「骨が細いから」や「手術後に安静にできなかったから」などが考えられています。再手術をして何年も骨折治療をしている場合もあります。

再生力が強い若い犬でも癒合不全が起きることから、手術や従来の治療によって骨の治癒が妨げられている可能性があります。
小型犬の前足骨折は手術が治療に適さない
手術後に癒合不全が起きる原因は、「骨が細いから」「落ち着きのない犬の性格」「手術の技術不足」ではありません。手術では骨髄腔内にある新しい骨の元になる未分化細胞が骨折部位に行くのを遮断してまいます。

3Dギプス治療法の確立へ
当院は、犬の前足骨折では従来の手術法やギプス固定ではない新しい治療法が必要と考えました。 ヒト医療の再生医療学会の会員になり骨再生の仕組みの基礎研究を学びました。小型犬の手術後の癒合不全の原因が骨髄腔内の未分化細胞の阻害であると考えて、犬の橈尺骨骨折における3Dギプス治療法を確立しました。
3Dギプスは運動制限も手術も不要な画期的な治療法です。