犬の橈尺骨骨折に特化したギプス治療で、前足骨折が手術なし運動制限なしで治せます。通院で治療が可能で手術に比べて安全で低コストです。トイプードルやポメラニアン、イタグレやサルーキ、ボルゾイなど犬種や体格や年齢にかかわらず治療できます。骨折は1ヶ月〜2ヶ月半で治癒します。骨は太く強く修復するので、再骨折のリスクが低くなります。
3Dギプス治療とプレート手術の比較
比較 | 3Dギプス治療 | プレート手術 |
---|---|---|
治療期間 | 1ヶ月〜2ヶ月半 | 5ヶ月〜6ヶ月(手術からプレート除去まで) |
運動制限 | なし | あり |
麻酔 | 小型犬:なし 大型犬:短時間麻酔 | 手術 |
固定器具リスク | 皮膚炎 | 金属プレートの破折や湾曲や感染、応力遮蔽による骨密度低下と骨萎縮と骨融解 |
骨の再生 | 骨芽細胞の増殖 | 骨膜の癒合 |
3Dギプスについて
- 骨折周囲と骨髄腔の血液を温存できるので骨折の治癒が早い。
- 骨折周囲を全周で安定的に固定できる。
- 筒状の構造なので、ギプス装着の状態で歩行ができる。
3Dギプスは骨折した足を安定的に固定できます。軽量で完全に患肢にフィットするので違和感なく歩行や跳躍ができます。駆け足や跳躍、大型犬の歩行でも3Dギプスは壊れません。運動制限がないので骨折の治療期間でも通常の生活ができます。
治療手順
骨折した直後はレントゲン撮影をしたのち、徒手整復でアライメントを矯正して完全固定します。
骨折の7〜10日後に3Dギプスを作製し装着させて歩行を開始させます。 その後は1〜2週間ごとの定期的な通院で消毒とレントゲン撮影をします。 折れた骨は負荷刺激と休憩を繰り返すことで治癒します。自己の修復力を利用して治る骨は短期間で太く強くなります。
治癒期間は年齢によって差があり、約1ヶ月から2ヶ月半です。生後6ヶ月未満の犬は約1ヶ月で骨折が治ります。高齢犬や骨折端が大きくズレている場合は3ヶ月以上かかることがあります。
骨折の治り方
レントゲン写真の犬は2.2kgのトイプードルで生後6ヶ月、前足を骨折して来院しました。受傷してから8日目に来院したので3Dギプスを作製して装着しました。14日後には骨が太く強固に再生しています。27日目には骨折が治りました。55日目には太くなりすぎた骨は元の太さに戻っています。
3Dギプス治療法なら太く修復して、その後に元のまっすぐな足に戻ります。
当院で治療した181症例(2018~2023)
症例の約70%がトイプードルとポメラニアンであり、前足の細い犬種で骨折が多く起こります。1才未満で活発な小型犬が前足を骨折することが多いです。
手術では骨折が治りまでの数ヶ月は運動制限が必要ですが、若くて活発な犬を安静にコントロールさせることは難しいです。当院に来院する前足骨折の約10%は手術した後の再骨折です。
年齢別の治癒期間が予測できます
3Dギプスによる治癒期間の中央値は、生後6ヶ月未満は31.5日、6ヶ月から1才未満は44日、1〜2才未満は62日、2才以上は74日です。高齢犬でも骨の修復力は維持します。
3Dギプス治療法の臨床的意義
1、手術が不要。
2、運動制限が不要。3Dギプス治療法なら運動制限はありません。歩行することで骨折を治す画期的な治療法です。
3、骨折の治癒が早い。未分化細胞が骨折を再生させるので最短で治ります。
4、骨折が治るまでの期間が予測できる。当院で治療した犬のデータから年齢別の治癒期間が予測できるようになりました。
5、一般の動物病院に広く普及が可能。当院では毎月一回、他院の獣医師に向けて3Dギプスの実習を行っています。
学会発表
・3Dギプスによる犬の橈尺骨骨折の治療 石嶋茂夫(2023年度第107回 獣医麻酔外科学会)
・3Dギプスを用いた橈尺骨骨折の非観血的治療 唐津健輔 石嶋茂夫(日本獣医内科学アカデミー学術)
・犬の橈尺骨骨折のピンニング手術後の骨吸収が3DギプスとPRP療法で回復した症例 石嶋茂夫(日本獣医再生医療学会 第15回年次大会)
・3Dギプスによる犬の前足骨折の治療 石嶋茂夫(第21回 日本臨床獣医学フォーラム年次大会)
特許
動物の橈尺骨骨折治療用ギプス及びその製作方法並びに動物の橈尺骨骨折の治療方法 石嶋茂夫 Japanese Patent Application 2023-100657 (日本特許出願) 特願出願番号2020-168753
骨折治療に関する問い合わせ
メール ishijima2013@gmail.com
電話 0471461047