３Dギプス治療法（一般向け）

３Dギプス

はじめに

家庭犬の小型化が進み、体重1〜2kgほどの超小型犬が増えています。骨が細くなるほど、骨折した前足を手術で治すことは難しくなります。そこで当院では、2018年に犬の橈尺骨骨折に対する3Dギプス治療法を確立しました。

近年のヒト医療では、骨折治療は「金属で固定する手術」から「体が本来もつ自己修復力を引き出して再生させる治療」へと変化しつつあります。3Dギプス治療法は、その流れを先取りする形で、超小型犬の細い前足の骨折でも、自己修復力によって治癒させることができることを示した新しい治療法です。

この治療法に関する研究成果は、国際的な学術誌に報告するための研究としてまとめられ、現在はプレプリント（Preprints.org）として公開されています。研究では、骨折の治癒過程をレントゲンで時系列に可視化したこと、そして年齢ごとに「どのくらいの日数で治るか」を予測できるモデルを構築したことを世界に先駆けて報告しています。

３Dギプス治療法の特徴

1️⃣ 日常生活を維持できる
犬が歩行・駆け足・ジャンプを通常通り行える。
2️⃣ 動物福祉に適する
治療ストレスが最小限。

3️⃣ 治癒が早い
若齢犬では特に、6〜8週間で完全治癒する例が多数。従来の固定法よりも早く治る。
4️⃣ 手術なし
麻酔・手術設備・入院管理が不要。
5️⃣ 再生医学的モデル
生体内での自然治癒プロセスを“可視化”した世界初の臨床モデル。
6️⃣ 再骨折率が極めて低い
再骨折は約2％（手術後の再骨折は最大20％）。
7️⃣ 臨床応用の再現性
トレーニングした他獣医師なら治療が再現できる。学術・教育・国際普及の基盤となる。

治療手順

骨折したら当院に電話かメールで連絡して早い日に来院して下さい。骨折直後は炎症止めの薬は使用しないでください。３Dギプス治療法は２種類のギプスを使います。骨折初期は完全固定のギプスで７日目くらいに３Dギプスです。３Dギプスを装着して歩行することで骨折は治ります。

来院後の治療

ステップ１、牽引固定

骨折したら、できるだけ早期に骨折した足は添木を使って固定します。骨折した足は完全固定を行い、約７〜１０日間は安静に過ごします。

ステップ２、３Dギプス作製

３Dギプスを装着してからは歩行を開始します。装着初期は３本足で歩行しますが、１週間程度で骨折した足でも着地するようになります。歩行するほど骨折は早く治ります。

３Dギプス治療は、この着地で新しい骨が作られます！骨折の治療期間中に自由に動けることは動物福祉の観点から重要です。

ステップ３、１週間おきに通院

週１回の通院で、３Dギプスを調整しながら皮膚の洗浄と消毒をします。

ステップ４、レントゲンで確認

２週間ごとにレントゲン撮影して骨の再生を確認します。通院日数は年齢、炎症止めの使用の有無、骨の折れ方により異なります。骨折した箇所で架橋結合ができたら治療が終了になります。自己の修復力を利用して治る骨は短期間で太く強く治ります。３Dギプスの治療期間の運動制限はありません。骨折が癒合して太くなりすぎた骨は徐々に元の太さと構造に戻ります。