尿管結石とは

泌尿器系の結石には、膀胱の中にある膀胱結石、腎臓の中にある腎臓結石、尿管の中で詰まっている尿管結石があります。

尿管は、腎臓から膀胱につながる筒状の構造です。腎臓内で作られた結石が、尿路尿管に入り込んで、途中で引っかかっている状態の結石です。猫の尿管結石で多い種類は、シュウ酸結石です。シュウ酸結石の周りは、鋭い凹凸があるので尿管の中で、引っかかり詰まります。

猫の尿管は直径1~2mm程度の筒状の管です。2~3mmの大きさの結石が尿管に入り込むと、途中で尿管閉塞を起こします。

尿管に結石は詰まった場合は、逆流性に腎臓へ圧力がかかるようになり、水腎症を引き起こして、腎不全が進行していきます。

 

尿管結石の検査

血尿で来院されて、検査により尿管結石を発見できることが多いです。しかし、通常の尿検査では、シュウ酸結石は見つからない場合が多いので、レントゲンや超音波検査も行うことが必要です。
手術を行う前には、腎臓の造影検査を行って、左右の腎臓が機能しているかをチェックします。どちらか片方の腎臓の機能が失われている場合で、腎不全を起こしている場合は、腎不全のステージの悪化が早くに起こります。レントゲン写真は白黒写真のように描出されます。骨や結石などの密度の高い場所は、白さが強調されて写ります。超音波検査でも白さが強調されて描出します。

尿管結石の検査例:その1

超音波検査やレントゲン検査にて、両側に直径2〜3ミリの尿管結石を確認しました。右の腎臓は水腎症になっており、中程度の腎不全を起こしていました。腎臓造影で機能検査を行ったのち、手術で、両側の尿管結石を摘出することになりました。描出能力の高い超音波検査機器では、尿管結石や拡張した尿管まで確認できます。

 

尿管結石の検査例:その2

大量の尿管結石が詰まっています。また、腎臓結石と膀胱結石も確認できます。尿管に詰まった大量の結石により、腎臓は水腎症になり、腎不全のステージ3まで急激に悪化していました。手術で尿管結石を摘出する必要はありますが、手術の難易度と合併症のリスクが高い症例です。

 

尿管結石の摘出手術

手術準備

尿管の縫合は、髪の毛よりも細い糸で縫合します。当院では、人の医療で使用されるPROLENE6-0〜7-0で縫合します。

肉眼では見えにくくなる尿管の縫合を行うときは、手術用のサージカルルーペを使用します。肉眼で手術するよりも、格段に縫合や切開などの精度が上がります。キーラー社のルーペが使いやすいので好んで使用しています。

症例その1

全身麻酔をした後、腹部正中切開で両側の尿管を露出します。手術用タオルで周囲の臓器を保護して、作業部位だけ露出させます。

尿管の切開は、拡張している腎臓寄りの尿管を斜め切開すると、縫合時の狭窄リスクが低くなります。
尿管内の結石部位を確認したら、尿管切開を行い結石を露出させて摘出します。

 

猫の尿管結石の摘出手術

切開部位の尿管から、カテーテルを両方向に通して、結石があった箇所以外に閉塞が無いことを確認します。膀胱側の閉塞確認は、膀胱を切開して膀胱三角部を確認します。

腎臓側にカテーテルを進めて、腎盂を洗浄します。腎臓内に結石がある場合は、腎臓切開で結石を摘出することがあります。腎機能が低下している場合の、腎臓切開は術後に腎不全が一時的に悪化することがあります。

猫の尿管の縫合

尿管は1〜3mmの管です。切開した尿管の縫合には髪の毛よりも細い糸を使用します。肉眼で確認する縫合よりも、手術用のサージカルルーペを使用することで、縫合の正確性が格段に上がります。尿管の縫合後は、尿のリークを確認します。

術後は、尿の排出の確認し、腎機能を測定します。また、超音波検査で腹腔内に尿が漏れないことを確認します。摘出した結石は、成分を分析して食事療法を決定します。尿は培養検査をして細菌感染の確認をします。

 

症例その2

下の写真の猫は、右の尿管に2つの結石が詰まっており、右側は水腎症になっていました。腎臓造影検査で、左の腎臓は機能していませんでした。腎臓が機能しているのは右なのですが、尿管結石によって、右の腎臓のダメージが進行している状況でした。これ以上の水腎症の悪化を防ぐために、尿管結石を摘出手術を行いました。手術は、腎盂内の尿感受性検査、腎盂内の洗浄、腎臓のバイオプシー、尿管結石の摘出です。

腎臓内の尿を採取して、細菌の培養検査を行っています。培養検査の結果に基づいて抗生剤を選択します。

腎臓内の洗浄を行い、腎臓内の結石を除去して、細かい結石は洗い出します。

尿管内の結石を摘出しています。数ミリの結石でも猫の尿管は閉塞します。摘出した結石は、結石成分を分析します。結石の種類により、今後の食事内容を変更します。

腎臓は左右で2つあります。片方の腎臓が機能していない場合で、残りの腎臓が腎不全を起こした場合は、悪化の速度は早いです。尿管結石は水腎症の原因になり、水腎症になってしまうと、腎不全の悪化が急激に進行します。尿管結石の成分は、シュウ酸であることが多いので、食事療法では結石が溶けません。

 

症例その3:大量の尿管結石で難易度の高い手術

検査その2の写真です。尿管に大量の結石が詰まっています。左右の尿管に結石があり、水腎症を起こしており、腎不全のステージの悪化が見られました。

尿管内に結石が大量にある場合の手術は、尿管を切開する範囲が長くなります。また、尿管の炎症が広範囲で、肥厚していたり組織が脆弱になっていることもあります。愛護的な組織の取り扱いと、顕微鏡下での正確な縫合が必要な手術です。

 

右側の尿管に結石が大量に詰まっていました。結石によって、尿管壁は肥厚しており、内腔は結石が大量に入っているため、拡張しています。

 

3cm以上にわたって尿管に結石が詰まっています。結石の表面には鋭い凹凸があるため、小さな切開で摘出することは不可能でした。切開ラインを長くして全ての結石を摘出します。全ての結石を摘出し終わったら、尿管用のガイドワイヤーを入れて、尿管に閉塞がないかを確認します。

縫合はサージカルルーペを使用して、尿漏れや閉塞させないように縫合します。

尿管は尿が通る管なので、縫合のミスや癒合不全になると、腹腔内に尿が漏れ出てきます。細菌尿になっている場合は腹膜炎を起こします。術中も十分に確認しますが、手術後の数日間は超音波検査を1日2回行って、腹腔内で尿もれがないかを確認します。縫合した場所で尿が漏れていた場合は、再手術を行い縫合します。

 

下の写真は、左の尿管から摘出した尿管結石です。硬く不揃いで、凹凸があり、まるで砂利のようです。一つ一つ摘出してから、尿管を洗浄して、尿管閉塞が解除されていることを確認します。

 

左側の尿管結石は小さな結石が一つだけでした。結石が一つで小さい場合は、小切開で摘出できます。

切開が小さい場合は、縫合の難易度も低く、縫合部位から尿が漏れるリスクも低いです。

 

症例その4

左右の腎臓に腎臓結石、左の尿管に尿管結石、膀胱結石がありました。
左腎臓は萎縮しており、ステージ2の腎不全が確認できました。また、腎臓造影で左右の腎臓が機能しているのを確認しました。

腎臓結石と尿管結石と膀胱結石

腎臓結石の摘出

腎臓結石は腎炎や細菌感染の原因になります。また、腎臓結石は、尿管に入り込んで尿管閉塞になるリスクがあります。

腎臓結石の摘出は、腎臓を切開して、腎盂内にある結石を摘出します。この時に、腎臓内の細菌感染の検査も行います。

尿管結石の摘出

尿管に結石が詰まると、腎臓に圧力がかかり水腎症になって、腎臓が大きく膨らみます。その後に、腎臓が萎縮していきます。腎臓に圧力がかかることで、腎不全が起こります。

尿管結石は、術前の超音波検査で位置を確認しておきます。尿管を手でつまむと、硬い結石のある箇所が確認できます。小さい結石は、ピンポイントで切開して結石を摘出し、尿管を縫合します。縫合は、特殊な極細の糸を使用します。

繊細な手技が必要になるので、サージカルルーペを使用しながら手術を行います。

膀胱結石の摘出

今回の手術の膀胱結石は、尿道で閉塞しており、一時、尿道閉塞を起こしていました。尿道にカテーテルを挿入して、結石を膀胱内に押し込み、膀胱切開で結石を摘出しました。結石の取り残しがないように、手術中に超音波検査を行なって、摘出できたことを確認します。

手術で摘出した、腎臓結石と尿管結石と膀胱結石

摘出した結石はごく小さいものでした。小さい結石でも、尿管や尿道で結石が詰まった場合は、急性腎不全になるので、緊急の処置が必要です。

今回の結石は、事前の検査でシュウ酸結石と分かっており、食事療法や投薬では結石を溶かすことができないので、手術を行いました。

 

尿管結石の手術について

尿管結石の手術は難易度が高いので、内科療法を選択している場合が多いと思いますが、サージカルルーペと確実な縫合技術があれば手術は可能です。尿管結石は、水腎症を引き起こして、腎不全になります。腎不全が進行している場合は、手術が行えないこともあります。早期の摘出手術をお勧めしています。