気管虚脱とは

喉には、口から肺までの空気の通り道(気管)があります。C型の気管軟骨と軟性膜でできており、ホースのような筒状の構造になっています。この気管軟骨が弱くなって、気管が扁平になる状態を気管虚脱と言います。

気管虚脱になると、ガチョウの鳴き声ような咳をします。気管のつぶれ方で4段階で評価をします。グレード4では、咳が止まらない状況が続いて、生活の質が非常に悪くなります。気管軟骨が虚脱を起こすと、内科療法やサプリメントでは回復しません。
気管虚脱が一番起こりやすい場所は、首輪をつけている位置の頸部です。散歩中で引き綱を強く引いたりすると、首の気管軟骨に過度な力が加わって、気管虚脱になります。特に小型犬は気管軟骨が薄くて弱いので、気管虚脱を発症しやすいです。頸部に気管虚脱が起こると徐々に胸部まで広がって行きます。胸部で気管虚脱を発症した場合は、手術をおこなっても咳のコントロールは困難です。また、心臓の弁膜症により気管分岐部で気管支の虚脱が起こります。気管支の虚脱では、手術の整復は不可能です。

気管虚脱の検査

頸部の気管虚脱

頸〜胸腔内の気管の太さをレントゲン撮影で撮影します。気管を縦方向から撮影したレントゲンと、呼気と吸気の時のレントゲンを撮影します。気管を縦方向から撮影すると、正常は気管は、ほぼ円形をしていますが、気管虚脱を発症した場合は、扁平〜三日月型になります。また、呼気と吸気のレントゲン画像では気管虚脱の場所を確認できます。

胸部の気管虚脱

息を吸った時と吐いた時で、胸部の気管の太さが異なる場合は、胸部で気管虚脱があります。

透視装置による気管虚脱の検査

レントゲン透視装置では、通常の連続した呼吸状態がわかるので胸部と頸部の虚脱部位が、より正確に確認できます。

内視鏡による検査

気管の内視鏡検査では、気管虚脱の位置とグレードが観察できます。内視鏡検査を行うには、全身麻酔が必要になります。全身麻酔下の内視鏡検査では、気管枝分岐部の虚脱の確認まで可能になります。

犬の気管

犬の気管の分岐部

 

気管虚脱の手術

PLLP法による手術

プラスチック光ファイバーのアクリル樹脂を整形して気管の外側から装着し、気管軟骨を補強する手術法です。

PLLPの作成と準備

気管の太さと気管虚脱している範囲は、個体により異なります。気管に装着するPLLPは、長さと直径を測定して作成します。

写真は、いろいろなサイズの気管の太さと長さに成型したPLLPです。それぞれの気管の直径と長さに合ったものを使用します。

手術
ポジショニング

正確な手術を行うために、全身麻酔下で気管が一直線になるように体位を固定します。

犬の気管虚脱の手術

頸部を切開し気管を露出すると、扁平になった気管が確認できます。気管周囲には、食道や神経、頸静脈や動脈の血管があるので、慎重に開創していきます。

白い軟骨が並んでホース状になっているのが気管です。胸部の入り口付近で、気管が細く扁平になっています。通常の気管軟骨は円形を保つのですが、気管虚脱では軟骨が扁平状になっています。

犬の気管虚脱の手術、切開

気管に、作成したPLLPを合わせて装着します。

気管が拡張するように、PLLPと気管を縫合しながら牽引して気管の内腔を広げます。

胸部の入り口の固定をしっかり行うと、手術後に咳が起こりにくくなります。

手術後の管理

手術後は、頸部の動きを制限するためにマズルコントロールをつけます。

入院中は、呼吸状態を管理して異常がないかを確認します。5〜7日の入院で退院できます。

 

気管ステントによる手術

気管内部から広げるニチノールステント(Infinity Medical社)を気管内に挿入する手術です。
透視下で気管の太さを測定して、気管のサイズに合ったステントを挿入します。頸部〜胸部の深い位置までの気管虚脱で適応が出来ます。
気管ステントはカリフォルニアから輸入するため注文から2〜3週間かかりますが、当院では在庫を10サイズ(小型犬用)を準備しています。 挿入するステントのサイズが、当院の在庫にあれば、当日でも緊急手術が可能です。
ステントのサイズ測定は、麻酔をして人工呼吸をしながら20cm H20の気管の圧力下でレントゲンを撮影します。レントゲン写真から、気管の直径と虚脱部位の長さを測定し、適応するステントのサイズを選択します。サイズが不適合のステントを挿入すると、挿入したステントの場所が移動したり、気管の損傷を起こす可能性が高くなります。挿入後に持続性の咳や機械的圧迫があると、ステントを損傷させる可能性があります。吠える犬は、しつけ教室の参加またはドックトレーナーによるトレーニングを勧めています。

永久気管の設置

以前、行われていた手術法です。全胸部に空気の入り口を作ります。

内科療法

軟骨が虚脱を起こした気管は変わらないので、長期間の投薬が必要です。手術が不適応な場合や、高齢犬では飲み薬でコントロールすることがあります。現在は、気管虚脱の咳を良好にコントロールできる薬がありますので、当院の獣医師に相談してください。

 

家庭でできる気管虚脱の予防と対策

首輪から胴輪に切り替えましょう

気管とは喉から肺までの空気の通り道です。気管虚脱は、気管を支えている軟骨が弱くなり、ホース様の丸い形が潰れて、扁平になり内腔が狭くなる病気で、ガチョウの鳴き声のような咳をします。トイプードルやポメラニアンで起こりやすく、また、中型犬以上でも散歩中に綱を引っ張って歩く犬は、気管虚脱になるリスクがあります。

体重管理

肥満が気管虚脱の悪化の原因になります。体重管理として、食事療法を指導しています。運動より食事療法で減量させます。

むだ吠えの矯正

興奮してよく吠えやすい性格は、気管虚脱を悪化させます。定期的に開催している「犬のしつけ方教室」への参加を、お勧めしています。無駄吠え矯正、興奮しやすい性格の改善させましょう。