椎間板ヘルニアの診断と治療

急性期では、脊髄造影から手術まで対応します。
慢性期や多発性の場合では、再生医療による治療を行います。

椎間板ヘルニアを発症すると、急激な下半身の麻痺がおこります。椎間板ヘルニアを疑う症状で自力歩行ができない場合は、脊髄造影またはMRIで脊髄傷害の部位と程度を判断します。脊髄の圧迫が1カ所で重度なら、片側椎弓切除手術またはベントラルスロット手術を行います。多発性の椎間板ヘルニアや、発症してから時間が経過したグレード4、5の症例では、再生医療(脂肪幹細胞)とリハビリで治療します。当院では、100例以上の椎間板ヘルニアの手術を行っています。

検査

意識状態、行動、起立と歩行時の姿勢、不随意運動の有無を観察

神経学的検査は麻痺の重症度、病巣部位の特定を行なっていく
脳神経検査では異常を認めないことが多い(頭蓋内圧亢進に関連した脊髄空洞症や環軸不安定症は異常あり)

椎間板ヘルニア、環軸不安定症、ウォブラー症候群、馬尾症候群、脊髄損傷では頸部痛や背部痛があります。

変性性脊髄症や線維軟骨塞栓症(脊髄梗塞)では知覚過敏を示しません。

  • 深部痛覚の有無は重症度評価につながります。
  • X線検査:脊椎疾患の評価
  • CT:脊椎疾患の評価、椎間板ヘルニア、椎骨腫瘍の評価
  • MRI:脊椎、脊髄疾患の評価では一番有用
  • 脳脊髄液検査:脳炎の判定

鑑別診断:椎間板ヘルニアの症状と似た病気

線維軟骨塞栓症

血管性脊髄疾患で、脊髄梗塞をおこします。背部痛がないのが特徴です。
MRIで診断します。
治療は内科療法をおこないます。治療開始後2〜3週間以内に正常に回復します。

変性性脊髄症

SOD1遺伝子異常が原因です。ウエルシュコーギーでは遺伝子診断が出来ます。
高齢のコーギーでは椎間板ヘルニアよりも変性性脊髄症の方が多く発症します。
有効な治療法はありません。機能維持、進行を遅くするための、早期からの積極的リハビリを行います。

胸腰部椎間板ヘルニアのグレード

グレードにより治療方法が異なります。1、2では内科療法を行い、3以上では外科手術や幹細胞療法を行います。脊髄の圧迫が重度な場合は外科手術を行い、中程度以下の圧迫や複数の箇所でヘルニアがある場合は幹細胞療法をおこなっています。

  • 1、痛みのみで神経以上なし。
  • 2、不全麻痺、歩行可能
  • 3、重度の不全麻痺で歩行と起立ができない。
  • 4、完全麻痺、自力排尿ができない。
  • 5、深部痛覚のない完全麻痺

進行性脊髄軟化症

椎間板ヘルニアで、進行性脊髄軟化症を発症した場合で、重度の脊髄損傷に続発する進行性で不可逆性の麻痺がおこります。
胸腰部椎間板ヘルニアの3〜6%(重症例では10%)で、進行性脊髄軟化症が起こります。進行性脊髄軟化症は、3〜5日後に肛門の弛緩やホルネル症候群(目の瞬膜の突出)が現れ、麻痺から数えて5〜7日後に死亡します。有効な治療法はありません。この病気の進行を理解をしてもらってから治療を行います。

ステロイド

中枢神経系の抗炎症効果とフリーラジカル産生抑制、脊髄炎や脊髄浮腫、自己免疫性の髄膜炎では有効です。脊髄損傷、椎間板ヘルニアでは運動機能の回復にはステロイドの効果はありません。現在、当院では使用していません。

手術と再生医療で治療します。

Mダックスが急に下半身麻痺を起こした場合は椎間板ヘルニアの可能性が高いです。自力歩行ができない場合は、脊髄造影を行い脊髄の病変を確認し、 椎間板が脊髄神経を中度〜重度に圧迫していた場合は手術を行います。脊髄への圧迫が 軽度、 複数、または高齢犬の場合は内科治療と再生医療(幹細胞療法)を行います。現在はステロイド薬は使用しないか最小限の使用にとどめています。 幹細胞療法は脊髄損傷の亜急性期(発症後2週間〜1ヶ月後)に点滴で治療をします。脊髄損傷の慢性期になってしまった例でも、幹細胞療法とリハビリを行うことで、症状が改善する可能性があります。

腰椎の椎間板ヘルニアの治療と検査

症状が軽度なら、注射や内服薬、コルセット、運動制限で治療します。
椎間板ヘルニアではグレード3以上の腰が立たない症状の場合は、脊髄造影かMRI検査を勧めます。椎間板の脊髄への圧迫が重度の場合は手術を行います。軽度から中程度または多発性の場合は、幹細胞療法を行います。脊髄損傷した時間的経過から、急性期、亜急性期、慢性期に分類され、それぞれに合った治療を行っています。

脊髄造影とMRI検査

脊髄造影を行うには全身麻酔が必要です。脊髄造影を行いレントゲン撮影ができます。その時点で椎間板ヘルニアの診断と脊髄の圧迫箇所が分かるので、麻酔をかけた状態のまま手術に移行できます。

椎間板ヘルニアの手術

片側椎弓切除術

脊髄圧迫箇所の直上で皮膚の切開〜腰椎までアプローチします。次に腰椎の骨を削って脊髄を露出させます。圧迫している物質(椎間板の髄核)を摘出して、脊髄炎症の程度を確認し、定法で縫合します。

1、椎体までアプローチ 2、椎弓の部分切除 3、逸脱髄核を確認 4、逸脱髄核の除去

腰椎の椎間板ヘルニアの手術

胸椎の椎間板ヘルニアの手術

腰のヘルニア手術と同様ですが、肋骨があるのと棘突起が深いので手技が難しくなります。

頚部のヘルニアの手術

首でも椎間板ヘルニアは起こります。軟骨異栄養性犬種とビーグルと小型犬で発症が多いです。手術方法は、頸部腹側減圧術(ベントラルスロット)を行います。首の前側から切開して、頸椎の骨の一部を削り脊髄圧迫部位の減圧をします。手術後は頸部をコルセットで固定します。

椎間板ヘルニアの再生医療

当院では、椎間板ヘルニア手術で麻痺が回復しない症例に対して、幹細胞治療をお勧めしています。発症後80日までに脂肪幹細胞の投与を行うと、麻痺回復の日数が早くなる傾向があります。

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