フィラリアが大量に心臓内に入り込むと、急性心不全を起こします。
伏せたまま立てなくなり、喀血や血尿、急性貧血を起こします。緊急手術で、心臓内に寄生したフィラリア成虫を取り除く必要があります。ベナケバ症候群を発症した当日に、犬の心臓内にいるフィラリアを、緊急で摘出ができない場合は、多くの症例が亡くなります。
フィラリア手術の手順
小型犬ですが、心臓内に多数のフィラリアが寄生していました。

急性のフィラリア症を発症して、貧血と心不全で、うつ伏せのままで動けない状態です。
超音波検査で、心臓の右心房内に、フィラリア成虫を確認します。

ベナケバ症候群になっているので、緊急で心臓内のフィラリアを摘出する手術を行います。全身麻酔を行なって手術するので、麻酔リスクが高い手術になります。
全身麻酔の状態で、左の首の皮膚を切開します。

血管(頸静脈)を露出して切開します。

血管内にアリゲーター鉗子を挿入します。

アリゲーター鉗子は30cmくらいの長い鉗子で、先端で物をつかめるようになっています。

頸静脈から30cmのアリゲータ鉗子を挿入させて、先端を心臓内まで侵入させます。

鉗子の先を、少しだけ開いて心臓内にいるフィラリア成虫をつかみます。
ゆっくり引き出してくると、頸静脈の血管からフィラリア成虫が取り出せます。糸状に見えるのが、フィラリアの成虫です。

この作業を複数回、繰り返して、右心房内にいるフィラリアを全て取り除きます。聴診で心臓の雑音が無くなったことを確認して、超音波診断機で心臓内のフィラリア成虫がいないことを確認したら、摘出が終了です。

鉗子を挿入するために切開した血管を、細い糸で縫合します。

心臓の血流が改善できると、状態が安定します。
退院後も心臓薬の投与が必要です。

小型犬ですが、30匹程度のフィラリア成虫を摘出できました。

フィラリアに寄生されると、急性心不全を起こします。大量に心臓内にフィラリアが入ると、多くの犬が心不全で亡くなります。
フィラリア症は、毎月1回の投薬で予防できる病気です。緊急手術を行っても救命できないこともありますので、忘れずに投薬をしましょう。